エルメスには「暗黙のルール」がある、と言われます。入店の服装、担当者のつけ方、実績づくり。どれも店が公表しているものではありません。
株式会社TBTの田畑と申します。ブランド卸の会社でエルメスを担当したあと、2024年に独立しました。今はエルメス専門で、月に50〜100点を動かしています。
先に結論を書きます。ルールは実在します。ただし、店が決めて隠しているのではありません。玉が足りないという一点から、結果としてそうなっているだけです。構造が分かれば、全部ふつうの理屈に見えてきます。
6つに分けて書きます。
1. 予約も、順番待ちの列もない
バーキンやケリーに予約はありません。名前を書いて待つ列も存在しません。時計には予約がありますが、バッグにはない。唯一の例外がパーソナルオーダーです。
決まっているのは、その日その店に何があったか。それだけです。「次はいつ入りますか」に店員が答えないのは、意地悪ではなく、本当に分からないからです。
詳しくはエルメスにバーキンの予約はないに書きました。
2. 見られているのは服ではなく、手入れ
服と鞄は、実は判断材料になりません。その日だけ良いものを着ることができてしまうからです。
見られているのは、靴とアクセサリー。全身をエルメスで揃える必要はなく、他ブランドの上質な靴でも、履き込まれて手入れが行き届いていれば伝わります。その日ではなく、日常が出る場所を見られています。
詳しくはエルメス正規店に行くときの服装に書きました。
3. 「バーキンありますか」と最初に聞かない
この聞き方は、ほぼ確実に断られます。店員が確かめているのは在庫の有無ではなく、誰が使うのかだからです。
「何かハンドバッグありますか」と聞いて、自分の話を少しだけする。それだけで出てくるものが変わります。実際、ヒルトンの一時店舗で1回目にケリー25が出てきたこともあります。
詳しくはエルメス正規店での聞き方に書きました。
4. 実績は、金額より中身で決まる
実績づくりでいちばん損をするのが、洋服です。100万円の洋服は、売れば20万円前後で戻ってきます。同じ100万円でも、何を買ったかで手元に残るものが違う。
換金率で選ぶなら、シェーヌダンクルが最強です。出ないときは5,000円程度で済む選び方もあります。買い取る側から見ると、実績商品の価値ははっきり分かれています。
詳しくはエルメスの購入実績づくりに書きました。
5. 担当者がつく線は、だいたい決まっている
担当者は「つけてもらう」ものではありません。金額と待遇には、だいたいの階段があります。
| 月100万円 | 担当者がつく |
|---|---|
| 月300万円 | 提案が積極的になる |
| 1,000万円 | それでも案内されない人はいる |
最後の行が、この話のいちばん大事なところです。金額だけでは決まりません。バーキンは担当者にとって「配れる札」で、誰に配るかには別の判断が入ります。
詳しくはエルメスの担当者に書きました。
6. 店舗によって、出る玉がまったく違う
銀座店で、一見のお客様にバーキンが出ることはほぼありません。客の数に対して玉が足りないからです。
店舗にははっきりと3つのタイプがあります。同じエルメスでも、並んでいる列の長さが違う。ショップカードの減り方を見れば、その店舗が今どのくらい動いているかも分かります。
詳しくはバーキンが出る店舗、出ない店舗に書きました。
ルールではなく、玉が足りないだけ
6つを並べると、全部が同じ一点から出ていることが分かります。欲しい人の数に対して、モノが足りない。
足りないから、店は誰に渡すかを選びます。選ぶために、その人が本当に使うのかを見ます。見るために、靴やアクセサリーや買い方を手がかりにします。順番はこれだけです。
「一見さんお断り」という言い方をされることがありますが、公式のルールではありません。初めての方に人気の型が案内されにくい、という傾向があるだけです。そしてその傾向には、上のような理由がついています。
私たちは業者間でエルメスを動かしている側なので、正規店で何が起きているかは、流れてくる玉の量と種類から逆算して見えます。暗黙のルールと呼ばれているものの大半は、その逆算で説明がつきます。
すでにお持ちのエルメスの、今の価値だけを知りたい場合は個人のお客様のエルメス買取をご覧ください。売ると決めていなくても構いません。


