古物市場でエルメスを仕入れている限り、利益率は自分では決められません。決めているのは、その日その場の競りの熱です。
株式会社TBTの田畑と申します。ブランド卸の会社でエルメスを4〜5年担当したあと、2024年に独立しました。今はエルメス専門で、月に50〜100点を動かしています。
市場に通っている業者の方から、同じ相談をよく受けます。競り負ける。勝ったと思ったら高い。結局、在庫が寝る。この3つはつながっていて、原因も同じところにあります。
高値掴みは、腕ではなく時期で起きている
エルメスのバッグには製造年を示す刻印が入っていて、これが毎年2月に切り替わります。業界の人間なら誰でも知っている話ですが、この前後で市場の景色が変わることまで意識している方は、意外と少ない。
刻印が切り替わると、中古相場が動きます。だから12月から1月にかけて、業者は手持ちを売り渋ります。私たちもそうします。切り替わったあとに出したほうが高く売れるからです。
結果として、12月から1月の市場は、出てくる玉が減ります。参加している業者の数は変わりません。玉が減って、買い手が減らなければ、値は上がる。当たり前の話です。
この時期に「今日は玉が薄いな」と思いながら、それでも手ぶらでは帰れないと競り上げる。これが高値掴みの正体です。目利きの問題ではありません。相場が薄い日に買っているだけです。
金具の相場は、年に2〜3回入れ替わる
もうひとつ、市場の値付けを狂わせる要因があります。金具です。
ゴールド金具とシルバー金具の相場は、年に2〜3回、入れ替わります。理由は単純で、エルメス本体がどちらの金具を多く出すかというバランスが動くからです。ゴールド金具ばかりが正規店から出てくる時期は、中古市場にもゴールドが増えて、相場が落ちる。逆にシルバーが出てこなくなると、中古のシルバーは数が減って上がる。
この波を見ずに「ゴールドのほうが高いはずだ」という去年の感覚で競ると、仕入れた瞬間に含み損を抱えます。金具ひとつで数十万円動く世界です。
革も同じです。オーソドックスな革で業者が高く買う順番は、ほぼ決まっています。
| トゴ | シボのある柔らかい革。傷が目立ちにくく、いちばん万人受けする。動きが早い |
|---|---|
| エプソン | 型押しの硬めの革。型崩れしにくく、バーキン25などの小さいサイズで強い |
| トリヨンクレマンス | トゴよりさらに柔らかい。好みが分かれるぶん、買い手を選ぶ |
この順番は、業界の中ではほとんど揺るぎません。市場で目の前の一点を見て「エルメスだから」と競るのと、革と金具と時期を掛け合わせて出口の値段を計算してから札を上げるのとでは、同じ落札額でも意味がまったく違います。
12月〜1月
業者が売り渋る
刻印が変われば相場が動く。出すのは切り替わってからでいい、と全員が考える。市場に出る玉が減る一方、参加する業者の数は変わらない。
流通量:少ない/落札額:上がりやすい
2月
刻印が切り替わる
製造年を示すアルファベットが変わり、中古相場が動く。溜め込まれていた在庫が、ここを境に市場へ出てくる。
流通量:戻る/相場:再形成
通年
金具の相場が2〜3回入れ替わる
エルメス本体がどちらの金具を多く出すかで、ゴールドとシルバーの上下が入れ替わる。去年の感覚のまま札を上げると外す。
波を見ずに競ると、仕入れた瞬間に含み損
※ 市場の動きは年によって振れます。ただ「玉が薄い時期に、頭数が変わらないまま競る」という構造そのものは毎年繰り返されます。
市場で買うということは、相場の一番高いところで買うということ
誤解のないように言いますが、古物市場を否定しているわけではありません。私も使います。
ただ、市場は競りです。競りである以上、その日いちばん強気な業者が値を決めます。つまり市場価格とは、その場にいた誰かの上限であって、あなたの利益が出る値段ではない。エルメスは参加者が多いぶん、この歪みが特に大きく出ます。
卸から引くというのは、この構造から降りるということです。競らない。値は最初から決まっている。決めているのは、革と金具と刻印と、今どちらの相場が上を向いているかを毎日見ている人間です。
そもそも、その在庫はどこから来ているのか
卸業者を選ぶとき、いちばん確かめるべきはここだと思っています。その会社は、玉をどこから引いているのか。
市場で仕入れた在庫を、市場価格に利益を乗せて卸している会社があります。その場合、あなたが払う値段には、競りで積み上がった分がそのまま乗っています。市場に行かずに済むという手間の削減にはなりますが、高値掴みの構造からは降りられていません。
TBTは、個人のお客様から直接買い取っています。エルメスを持っている方に写真を送っていただいて、査定して、納得いただけたら引き取る。月に50〜100点、この形で在庫を作っています。競りを経由していないので、その日の市場の熱が値段に乗りません。
広告も出していません。SNSで発信して、そこから直接ご相談をいただく形です。仕入れに広告費が乗らないぶんは、買取価格と卸値の両方に返せます。
在庫が寝るのは、出口を計算していないから
仕入れの相談を受けていて、いちばん多いのがこれです。売れると思って買ったのに、動かない。
入り口(いくらで買えるか)だけを見て札を上げると、こうなります。見るべきは出口です。この革、この金具、この状態、この付属品で、誰が、いくらで、どのくらいの期間で買うのか。そこまで計算してから、逆算して札を決める。
たとえばエプソンのバーキン25と、トリヨンクレマンスのバーキン35では、同じバーキンでも動く速さが違います。金具の相場が今どちらを向いているかでも変わる。この計算をせずに「エルメスだから」と買うと、在庫が資金を縛ります。
卸から引くというのは、この計算をこちらに預けるということでもあります。値付けの理由を聞いてください。答えられない卸なら、その在庫は買わないほうがいい。
TBTの取引条件
ロットの下限は設けていません。1点からお出しします。
掛け率は、初回のお取引でも継続のお取引でも変えていません。長く付き合った業者様だけを優遇して、新規の方に高く出すということはしていません。
新規のお取引も受けています。ただ、ここは正直に書いておきます。
エルメスは、1点の金額が大きい商材です。バーキンやケリーを卸すということは、こちらも数百万円の在庫をお預けするということになります。ですから、ある程度の商売の実績と、金額の大きい商品をさばける販路をお持ちであることが前提になります。立ち上げたばかりで販路がこれからという段階の方には、うちの在庫は重いと思います。そこで無理にお出ししても、お互いに苦しくなるだけです。
逆に言えば、探しているのはそこだけです。一度きりの単発ではなく、継続して引いていただける業者様と組みたい。こちらとしても、毎月動く先が決まっているほうが仕入れの計算が立ちますし、その安定は掛け率にそのまま返せます。
年間の取引金額は5億円、継続してお取引いただいている業者様が20社。エルメス専門でこの数字を回しているので、玉が切れて連絡が途絶えるということはありません。
取扱商材や条件について聞きたいことがあれば、お問い合わせからご連絡ください。古物商許可と、これまでのお取り扱い商材をお聞かせいただければ、初回から具体的な話ができます。
よくある質問
新規でも取引できますか。掛け率は変わりますか。
新規でもお取引します。掛け率は、初回でも継続でも変えていません。長い付き合いの業者様だけを優遇して、新規の方に高く出すということはしていません。ただし、エルメスは1点の単価が大きい商材です。ある程度の商売の実績と、金額の大きい商品をさばける販路があることが前提になります。
ロットの下限はありますか。
設けていません。1点からお出しします。まとめて引いていただく必要はありません。
古物市場と卸、どちらが安く仕入れられますか。
その日の1点だけを見れば、市場のほうが安く落とせる日はあります。ただ市場は競りなので、安い日もあれば、玉が薄くて競り上がる日もある。年間を通した平均で見たときに、どちらが読めるか、という話です。卸は値が決まっている代わりに、その値がなぜその値なのかを説明できます。
どんな商材を扱っていますか。
エルメス専門です。バーキン・ケリーなどのバッグを中心に、アクセサリー・小物まで。月に50〜100点、年間で5億円ほどを動かしています。エルメスしか見ていないので、革・金具・刻印・付属品の状態をどう値に反映するかは、こちらで説明できます。
